障がい者の権利に関する条約第24条では、インクルーシブ教育について次のように触れています。
「障がい者が精神的・身体的機能を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障がいを持つ人と障がいのない人が共に学ぶ仕組み」(要約)
2016年に障害者差別解消法が施行されたことにより、教育現場では、合理的配慮をすることが義務付けられました。
LD(学習障がい)で読み書きが難しいお子さんやADHD(注意欠陥・多動性障がい)で落ち着けないお子さんに対しても、学びやすいように特性を踏まえて配慮をしているのです。
▼通級に通う児童が増えている
「通級」とは、小・中学校に通っている比較的障がいの程度が軽いお子さんが、一人ひとりの障害に合わせた個別指導を受ける教室のことです。
通常のクラスに籍を置き、週に何時間か通級へ通います。
文部科学省の「令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について」によると、国公私立小学校そして中学校及び高等学校で、通級による指導を受けている児童生徒は増えています。
2019年には134,185名の児童生徒が通級に通っており、そのうち発達障がい(ADHD/学習障がい/自閉症スペクトラム)を持つお子さんは72,733名、つまり通級の児童の半数以上が発達障がいを持ったお子さんなのです。
▼インクルーシブ教育のメリット・デメリット
インクルーシブ教育のメリット
障がいのある人…コミュニケーションスキル・社会的スキルの改善、学校卒業後の適応がよくなるなどの効果が期待できます。
障がいのない人…障がいのある人に対する態度や認識の変化など。
インクルーシブ教育のデメリット
いわゆる「お世話係」になった人のネガティブな感情や、障がい者について十分な研修を受けていない教員の負担が増えることなどが挙げられます。
お子さん一人ひとりのニーズに応じた教育支援を行うために、多彩な取り組みがなされている中で、お子さんだけではなく親御さんも「心のバリアフリー化」を意識する必要があると言えます。
インクルーシブ教育と似たような概念・言葉に、ノーマライゼーションやインテグレーション教育があげられます。
ノーマライゼーションは
「障がいのある人がない人と同じように生活できる」という概念です。
これは障がいのある人の周囲を取り巻く環境や関わる人の意識などを変えることを目指しています。
つまり、障がいのある人の能力を最大限に引き出すことを目指すインクルーシブ教育とは異なっているのです。
インテグレーション教育は
ノーマライゼーションの考え方を教育の現場に応用したものですが、障がいのある人・ない人が同じ場所で学ぶという「場の統合」を主に指しています。
つまりインテグレーション教育もまた、障がいのある人も同じように授業についていけることを目指すインクルーシブ教育とは異なるのです。
様々な特性を持った人々が、同じ場所で、それぞれの個性を発揮し、その人らしく過ごすというのは素晴らしい目標ですよね。
それを実現するために、インクルーシブ教育が有効だと考えられています。
しかし、その実現には実際に授業・指導を行う教員への十分な研修はもちろんですが、障がいのある人が同じ空間にいることが当たり前と思えるような、親御さんやお子さん意識の変化も必要かもしれません。
「心のバリアフリー」を意識し、共感力を育んでいきましょう。
SDGs(持続可能な開発目標)の4番目に「質の高い教育をみんなに」という目標が定められています。
この目標の内容は「だれもが公平に、良い教育を受けられるように、また一生に渡って学習できる機会を広めよう」というものです。
この目標に向けて、日本でも「インクルーシブ教育」が注目されています。
そこで今回は、インクルーシブ教育についてご紹介します。